4ヶ月でスイーツ3品を開発。「卵」にこだわり試作を重ねる
- 健史 永尾
- 5月23日
- 読了時間: 4分
━━「千客万来」向けに新商品を開発するにあたり、FOODSLINKSに依頼した決め手は何だったのでしょうか?
伊藤:一番は、永尾さんのお人柄でしたね。永尾さんとは2年前に玉子屋を経営している方からのご紹介で知り合い、別件の商品開発を何度か相談させてもらっていました。打ち合わせを重ねていく中で、こちらの気持ちをきちんと汲み取ってくれる上、要求に対しても期待以上に応えてくれる人だと感じていました。
オープンまでの4ヶ月で新商品を開発するのは、期日的にかなり厳しいだろうと想定していましたが、永尾さんならきっと力になってくれるだろうという安心感がありました。「千客万来」への出店を、丸武の次の100年に繋げるようにしたい。そのためには、商品づくりにも妥協がなく、お人柄にも信頼を置く永尾さんにお願いしたいと考えました。

永尾健史(以下、永尾):そのように言っていただけて、うれしい限りです。「千客万来」向けの新商品として、プリン・ソフトクリーム・お芋のチーズケーキの3品を開発したわけですが、今振り返ってみると、怒涛の4ヶ月でした。

「卵本来の風味を前面に出す」という伊藤社長のこだわりを、商品にどう反映していくか。メーカーとも相談しながら、各スイーツにぴったりの卵を選びぬくところから始めました。
卵の味には、鶏に与える餌が大きく影響しています。どの餌で育った卵が、どの商品にあうのか。色々な組み合わせを検討した結果、プリンは層ごとに異なる卵を使っていますし、ソフトクリームやチーズケーキにも違う卵を使いました。
伊藤:プリンは、固めが好きな人もいれば、柔らかめが好きな人もいるので、食感の調整に悩みました。私自身、固めも柔らかめも好きなので、できれば両方味わえるプリンがいいと永尾さんに相談して、二層仕立てにしてもらったのです。
二層仕立てだと、作る手間が倍になります。ただでさえ期日が短かったので、対応できるメーカーは限られたはずですが、永尾さんは見事に期待に応えてくれました。見た目もきれいで、両方の食感が楽しめる自信作に仕上がったと思います。

永尾:もちろんメーカーの協力あってのことですが、美味しいものを作るために必要な手間なら、惜しむことなく最大限を尽くすというのは常に意識しています。ソフトクリームであれば、一般的なレシピと異なり、水を一切使わず、卵の配合を極限まで増やし、風味を活かすための口溶けにもこだわりました。
ソフトクリームの口溶けは、空気を抱き込む量によって変わります。そのため、ソフトクリームの製造機械を扱うメーカーを複数軒回り、最適なものを探し出しました。
伊藤:ソフトクリームの上に出汁ジュレをかけるのですが、その濃度もだいぶ試行錯誤しました。試食は、私と永尾さんに加えて、妻と娘にも協力してもらったのですが、味だけではなく、見た目のきらめき度合い等も考慮しながら、互いに意見を言い合い、改良を重ねました。
永尾さんは家が横浜なのに、当時は毎日、わざわざ築地まで通ってきてくれました。しかも試食の度に「こんな感じに作り直してほしい」と都度要望を上げたのですが、嫌な顔一つせず、メーカーの方々と上手に調整を図ってくれました。普通だったら「難しい」の一言で断られてしまうようなものでも、きちんと汲み取って対応してくれて、本当にありがたかったです。
永尾:丸武さんの始業が朝3時ですから、連日の試食に夜の8時9時までお付き合いいただくのは大変だったと思います。出汁ジュレについても、万人受けを狙うのか、丸武らしさを追求するのか、かなり議論しましたね。
伊藤:出汁ジュレがない方がより万人好みかもしれないとは思いましたが、最終的には丸武のこだわりである「秘伝の出汁」をジュレで全面に打ち出すことにしました。見た目にもインパクトが生まれましたし、他との差別化にもなったので、結果的にはよかったと思っています。
永尾:お芋のチーズケーキについては、クリームチーズやお芋の味で卵の美味しさが消えてしまわないように配合を工夫しました。クリームチーズは生産国によっても口当たりや風味が変わりますし、お芋も品種によって甘さや色味が様々です。それぞれの個性が強くなりすぎないよう、味のバランスにはかなり気を使いました。
また見た目の楽しさも考え、1回焼いた芋をくり抜いて舟のようにして、チーズケーキに混ぜ込んだ後、再び芋の皮の部分に生地を盛り込むという調理法を採用しました。プリンと同様に手間はかかりますが、より良い仕上がりになったと感じています。
つづく
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